統合失調症とは

統合失調症とは

統合失調症という病気はどんなだろう

  統合失調症は思考や感情の働きに不調が生じてしまう、脳と心の病気です。
  病気の経過の中で様々な症状が現れますが、その中でも特徴的なものは実際には存在しないはずの音や声が聞こえてくる「幻聴」、明らかに間違ったものごとを信じこんでしまう「妄想」、また感情が乏しくなったり意欲が低下したりする「陰性症状」、集中力や注意力が低下する「認知機能低下」などと呼ばれる症状たちです。
  これらの症状は薬剤による治療で改善が期待できますが、高血圧や糖尿病のように、一度治ったとしても再発を予防するために薬剤による治療を続ける必要がある、慢性疾患として難しい病気です。
  しかし、決して珍しい病気ではなく、生涯のうちに統合失調症になる人は全体の人口のおよそ1%と言われています。
  このような、広く発症し得る病気であるにもかかわらず、原因は今のところはっきりとはわかっていません。

病気との付き合い方について

  統合失調症という病気とうまくつきあっていくために大事なことは、
・再発を防ぐために薬剤による治療を継続すること
頑張りすぎ、過度のストレスを避けることです。
  早期発見も重要です。発症からすぐに治療が開始されるほど、その後の経過が良いことも指摘されています。

  病気について多くの人に広く知っていただくことは、早期発見や治療、そして当事者の方々の回復のためにとても重要なことです。正しい知識を身につけることは、ありふれた疾患である統合失調症への偏見や差別をなくす一歩となります

統合失調症研究の これまで と これから

主な病因についての仮説

  統合失調症の原因や治療法といった課題に対して、多くの研究が進められています。
  研究方法の進歩とともに、症状や原因と関係する可能性のある、神経伝達物質(神経間の情報を伝える物質)や脳の構造(形、分厚さ、体積など)の変化が明らかになってきています。

  幻覚や妄想には、ドパミンという神経伝達物質が関与していると言われています。
  ドパミン神経系の働きを抑える薬が有効であることから、ドパミン神経系の異常が原因であるとする、ドパミン仮説が知られています。さらに「周囲の重要な出来事に注意を向ける働き」をドパミン神経系が担うことが明らかになり、ドパミン神経系の亢進が周囲の物事のセイリエンス(顕著性)を高め、幻覚妄想が起きるとする異常サリエンス仮説が提唱されています。

脳の画像研究

  神経伝達物質は、positron emission tomography (PET) MR spectroscopy (MRS) といった画像検査を用いて調べることができます。
  脳の構造は、脳の形を見やすい(空間解像度の高い)核磁気共鳴画像法(MRI)により調べられます。
  MRIを用いた研究で、繰り返し報告されている結果は、前頭葉、側頭葉、島や海馬という部位において、灰白質(細胞の中心部分)体積が少し減少している、というものです。また、左右の脳の構造、機能が統合失調症を持たない方と比べて変化している(側性の変化)ことが知られています。脳の異常と症状との関連、また病気の進行に伴う変化についても研究が進んでいます。

  多くの被験者の方の貴重な協力を得て、集団としての傾向を調べることで、統合失調症の研究が進展してきました。個々の患者さんの診断や症状を、脳画像や血液検査などの各種検査の結果から判断できるような、今後の研究の進展が期待されています。

我々が目指している研究ゴール

統合失調症を「知る」

  研究のゴールの一つ目は、いまだ不明な部分の多い統合失調症の病態を理解することです。
  科学的な検証に基づく病態の理解が進むにしたがって、患者さんや医療者が病気と向き合う際により適切な選択がしやすくなるでしょうし、「分からない」という不安から解放されることで患者さんやそのご家族のお気持ちが楽になるかもしれません。また、統合失調症を理解することを通じて、精神疾患全体についての理解を深め、他の精神疾患の治療や予防に役立てられる可能性もあります。

統合失調症を「予防する」

  統合失調症の発症メカニズムを解明することで、発症を未然に防ぐ(一次予防)方法の糸口を見つけられるかもしれません。また、発症後なるべく早期に、あるいは発症以前に統合失調症の診断が可能となれば、早くから適切な治療が始められ、重症化を防げるかもしれません(二次予防)
 そうした診断・評価ツールの研究開発も期待されるところです。このように、統合失調症の予防のための方法を見出すということが、研究のゴールの第二といえます。

統合失調症を「和らげる」

  統合失調症をお持ちの方々が抱えるさまざまな困りごとを少しでも緩和し、生活の質を高めること、それが研究のゴールの第三です。統合失調症では、おくすりによる治療を受けても症状や困りごとが残る場合があるため、おくすり以外の新しい治療法や、症状を和らげるトレーニング法の開発に期待が寄せられており、すでに一部の方法では効果が実証されています。

京都大学の研究チームでは、以上のような目標を掲げて、統合失調症の研究を進めています。研究に参加し、病態解明や治療の進展にご協力いただける方は、以下のボタンからお問い合わせをお願いいたします。